優しい君に恋をして【完】
レストランから出ると、
まだ雪が降り続いていた。
真っ白になった道を、
ひとつの傘で、クリスマスツリーを横目に歩き出した。
腕をつかみながら、ちらっと優を見ると、
「ん?」とマフラーの上から見える目と合って、
それだけで嬉しくて、
「なんでもない」って笑った。
そのまま駅を越えて、
ゆっくりと私の家に向かった。
家の前に着くと、
優は何も言わずに、
傘を差したまま、私にキスをしてきた。
外が寒いせいか、
いつもよりもずっと優の唇が温かく感じた。
ふっと唇が離れると、
目の前に真剣な表情の優がいて、
お互いの白い息が、
重なり合っていた。
「2月20日が合格発表だから」
「うん」
「それまで、またあんまり会えないけど、
俺、頑張るから」
「うん.......」
「絶対に、合格するから」
「大丈夫だよ、優なら。
絶対に合格するよ。
頑張ってね、私........本当に応援しているから」
よかった.......今度は本当に、
心からそう願えている。
本当に、合格を願っている。
「ありがとう、あすか.......」
また、温かい優の唇が触れて、
そっと目を閉じた。
大丈夫、きっと優は、
離れてもまた、
必ず私の元に帰ってきてくれる。
大丈夫。
私は優を、信じる.......
そう思いながら、優しいキスを、
ずっと受け止めていた。