優しい君に恋をして【完】
私はキッチンに入り、
今日渡そうと思っていた、ガトーショコラを冷蔵庫から出して、
お皿に移した。
お母さんはコーヒーを入れてくれていて、
部屋中にコーヒーの良い香りが広がった。
トレイにそれらを乗せ、
「ありがとう」とお母さんにお礼を言うと、
「結果がどうであれ、ちゃんと笑顔でね。
泣かないのよ、あすか」
お母さんは、私の制服のリボンを直しながらそう言った。
「そうだよね......うん、泣かないよ」
トレイを持ってそう言うと、
お母さんは頷いて、リビングのドアを開けてくれた。
ゆっくりとこぼさないように、階段を上ると、
部屋のドアが開いていて、
優がドアからすぐのところに立っていた。