優しい君に恋をして【完】
そんな.......
あの時、そんなことを.......
「でも、茨城の大学は、優にとって良い大学なんでしょ?
ずっと、中学から目指していたところなんでしょ?
○美大は、一般の大学じゃん.......
優、辛くない?苦しくない?」
優は、笑いながら頷いた。
「俺さ、あすかに出会うまでは、
茨城の大学に行きたいって思ってた。
でもそれは、ここから逃げ出したかっただけなんだよ。
自分のことを誰も知らないところに、行きたかっただけなんだ。
目指していたわけじゃないよ」
優はいつまでも泣いている私の涙を、
ずっと拭ってくれていた。
「もし、あすかと出会っていなかったら、
きっと茨城の大学を受けていたと思う。
でも、俺はあすかと出会って、
もう一度、
聞こえる人達の中で、
頑張りたいって思えるようになったんだよ。
俺.......強くなりたいんだ。
聞こえる人達の中で、
ちゃんと自立して生きていけるようになりたい。
だから4月から、
大学のそばで一人暮らしする」