優しい君に恋をして【完】
どういう意味......まるでお父さんは、
優のお父さんを知っているかのような言い方......
「はい、よく言われます」
優はまっすぐお父さんを見つめて答えた。
お父さんは、「そうか」と言って、
少し俯いて、
また顔を上げて優の顔を見た。
「あすかと付き合っているのか?」
「お付き合いさせていただいています」
優は目をそらすことなく、
ずっとお父さんを見つめていた。
「あすか、お母さんはこのことを知っているのか?」
「お母さん......うん。知ってる」
「認めているのか?」
「最初は、許してもらえなかったんだけど、
今は認めてくれてる」
お父さんは、また俯いてしまった。
「耳のことで心配をさせてしまうかもしれませんが、
僕は.....」
「そんな風に思わなくていい。
俺も視力が悪い。
このとおり眼鏡がないと何も見えない。
君と同じだ。
そんなこと気にするな」
お父さん......
お父さんはずっと無表情な感じだったけど、
なんだかすごくかっこよく見えた。
そういう考えの人だったんだって初めて知って、
少し誇らしく思えた。
「ありがとうございます」
優は緊張していた顔が少し緩んで、
お礼を言うと少し頭を下げた。
「気をつけて帰りなさい。
あすか、先に中に入っているな」
「うん。
お父さん、ありがとう」
お父さんは大きな荷物を持って、
門の中に入っていった。
お父さんが玄関に入りドアが閉まると、
二人同時に深いため息をついて、
二人目を見合わせて笑った。
「めちゃめちゃ緊張したよ.......」