優しい君に恋をして【完】
優は下を向いて、自分の髪をくしゃくしゃっとした。
「私ね、あまりお父さんと話したことがなくて。
お父さんほとんど家にいないから.......
だから、ちょっと嬉しかった」
私がそう言うと、優は顔を上げて、
優しく目を細めた。
「少し、俺の父さんに雰囲気が似ているなって思った。
なんとなくだけど。
優しいところも似ていて、ちょっと.....いや、
すごくホッとしたよ」
優のお父さんに、私のお父さんが?
そうだったんだ。
「じゃあ、また明日な......」
「うん」
優は、何度も振り返りながら、
バス停の方へと歩き出した。
優が角を曲がるまで見送ると、
家の中へ戻った。
階段を上ろうとしたら、
リビングから声がして、
思わずリビングのドアの前で立ち止まった。
「よく、認めたな」
「私が認めたわけじゃないの。
奥さんに会って謝って、
奥さんが許してくれたから......」
「会ったのか?」
「えぇ......」
「あすかは全部知っているのか?」
「言えるわけないじゃない。
そんな、
自分の母親がついた嘘で、
彼のお母さんが襲われてしまったなんて.......
そんなこと言えるわけないじゃない」
お母さんのついた嘘で、
優のお母さんが、
襲われた........?
そんな、どういうこと........
私は、リビングのドアを開けた。