優しい君に恋をして【完】
「えっ......うそ.......」
下を向いてしまったお母さんの肩を、
お父さんがそっと優しく叩いた。
「何も言わなくていい。お母さんは何も悪くないんだ。
あすか、上に行きなさい」
お母さんのついた嘘
優のお母さんが襲われた
「お母さん、ちゃんと教えて」
「あすか、やめなさい」
「お母さん!」
私を止めるお父さんの手を払って、
お母さんに詰め寄った。
「高校の頃から、優くんのご両親はお付き合いしていて、
お母さん、片思いで......
二人の待ち合わせ場所がすれ違ってしまって、
お母さん、知っていたんだけど知らないって嘘を.......
その間に優くんのお母さんが......
まさか襲われてしまうなんて思わなかった.......」
そんな......
「だめじゃん、そんなの......
なんでそんな嘘ついたの?
そんなことまでして......
そんなことして、自分の思いが届くとでも思ったの?」
「あすか、お母さんを責めるのはやめなさい。
昔のことだ。
お母さんも、そのことをずっと後悔している。
お母さんもたくさん傷ついた。
だから、もう......」
「まさかお母さん、そのことで最初優とのことを反対していたの?
自分の過去のことで」
ずっと下を向いていたお母さんが顔を上げた。
「あすか、ごめんね......」
涙を流したお母さんの背中を、
お父さんはずっと優しくさすってあげていた。
その時、ふと優の言葉を思い出した。
【少し、俺の父さんに雰囲気が似ているなって思った】
お母さん、まさか......
「優のお父さんと、お父さんって似てるの?
だから、お母さんお父さんと結婚したの?
お父さんを、優のお父さんと重ねているの?」
お母さんは、ハッとして口を手で押さえた。
「あすか、いいんだ。
お父さんは、それでもいいと思ったから、
結婚したんだ」