優しい君に恋をして【完】
お母さんは、また涙を流した。
「好きに決まってるじゃない.......
お父さんはずっと、
どんなことがあってもお母さんを好きでいてくれて、
優しく支えてくれて……
もう、お金で苦労はさせないなんて、
そんなこと思わなくていいから、
少し休んで........
もう少し家族でいる時間を作ってください」
私は、ぼーっとお母さんを見つめているお父さんを、
肘でつついた。
「あ、うん、そっか。
うん......わかった。
4月までは、毎日ここに帰ってくるよ」
「4月まで?」
私がじろっとお父さんを見ると、
お父さんは、ははっと気まずそうに笑った。
「4月から今度はニューヨークに.......」
「はあ?また海外?」
はははっと笑っているお父さんを見て、
お母さんは、悲しげに笑った。
私はお母さんの肩にそっと手を置いた。
「お母さん、さっきは言いすぎたごめんね。
お母さんの気持ち、私わかんなくて.......
私......ごめん」
お母さんは立ち上がって、首を振った。
「お母さんが全部悪いの。
本当にごめんね。
優くんのお母さんには、夏に会ってちゃんと謝ったから。
もう気にしてないって言ってくれたの。
だから、あすかは何も気にしないで.......」
ちゃんと会って謝ってくれたんだ。
「辛かったでしょ......お母さん」
お母さんはまた首を振った。
「自分のことなんかより、娘の方が大事」
お母さん.......
「お腹すいたよ、ご飯にしよう。
やっぱりお母さんのご飯はうまそうだな......
早く食べよう」
お父さんは、ジャケットを脱いでお母さんに渡した。
嬉しそうに受け取るお母さんを見て、
なんだ、
二人はちゃんと、愛し合ってたんだって、
ずっとなんで結婚したんだろうって思っていたけど、
やっと謎が解けた、そんな気がした。