優しい君に恋をして【完】
その言葉が嬉しくて、
私は何も言えなくなってしまった。
もう、十分大切にしてもらっているのに……
手を繋いだまま、優の肩にそっともたれた。
それから優は、
学校を休んで教習所に行くようになった。
会える?とメールをすると、
本当に家まで会いに来てくれた。
でも、やっぱり気にしているのか、
あれから優の家に呼ばれることはなかった。
私も優のお母さんに会いづらかったから、
呼ばれないことに、正直ホッとしている自分がいた。
でも、桜木先生の結婚式では、
どうしても会ってしまうよね......
会ったら、どうしたらいいんだろう。
私が謝るのもおかしいのかな......
優のお母さんは、もしかして私にそのことを知られたくなかったのかな.......
会いづらい。
気まずい。
そんな気持ちのまま、3月になり、
私はやっぱり、
ピアノをやめた。
もう、桜木先生もいないし、
続ける意味がなかった。
そして優は高校を卒業して、
私よりも一足先に、春休みに入り、
念願の車の免許を取得した。