優しい君に恋をして【完】
私も春休みに入り、
3月29日
桜木先生の結婚式当日となった。
駅前のホテルでの教会式。
私は制服を着て、準備をしていた。
「あすか、お父さんがホテルまで車で送って行ってあげるから」
お父さんは、ジャケットを羽織りながらそう言った。
「ありがとう、お父さん」
「ちゃんと、マナーをしっかりね」
お母さんは私にハンカチを差し出してきた。
「わかった。行ってきます」
そっとハンカチを受け取り、ポケットにしまうと、
お父さんと一緒に玄関を出て、車の助手席に座った。
お父さんの運転でホテルに向かい駐車場に着くと、
「挨拶だけでもしてくるよ。
4月に入ったら、いつまた戻ってこれるかわからないから」と、
お父さんも車から降りた。
一緒にエレベーターに乗り、
チャペルのある階で扉が開くと、
たくさんの人達が談笑しているのが見えた。
お父さんが受付に向かい、私も後に続こうと思っていたら、
優が遠くに見えて、立ち止まった。
スーツだ………
優は私を見つけると、少し走って来てくれた。
黒い細身のスーツに、白地に水色の細い線が入った爽やかなネクタイ。
しかも、髪がワックスで盛られている.......
「かっこいい.......」
思わずじっと見惚れてしまったら、
優は片手で自分の顔を覆った。
「そんなじっと見るなよ.......」