優しい君に恋をして【完】
あ......なんか気まずい。
思わず下を向くと、
「あすか、ちゃんと挨拶」と小声でお父さんに窘められ、
顔を上げた。
「おめでとうございます」
「来てくれてありがとうあすかちゃん」
優のお母さんが優しく微笑んでくれて、
その笑顔を見て、複雑な気持ちになってしまった。
「じゃあ、私はこれで」
お父さんは二人に頭を下げた。
「あぁ、よかったら教会式見て行かないか?」
優のお父さんが、声をかけた。
「いや、ちょっと4月からの準備をしなくちゃいけなくて。
会えてよかった、ほんとに。
運命って不思議だな」
優のお父さんは深く頷いて、
「じゃあ、また今度は次男の結婚式で会おう」
そう言って笑った。
「あはははっ、正直まだ嫁には行ってほしくないなぁ......」
お父さんも笑って、
私に軽く手を振って帰って行った。
「優、ちょっと......」
お父さんが帰ると、
優のお父さんが優を連れて、廊下の向こうへ連れて行ってしまい、
お母さんと二人になってしまった。
き、気まずい……
でも、このままずっと気まずいのは嫌だと思った。
ずっと優と一緒にいたいのなら、
優のお母さんとのことを、ちゃんとしないといけないと思った。
じゃないと、私はずっとこのままお母さんに会うたびに、
気まずい気持ちになる。
そんなの嫌だ.......
私は思い切ってお母さんに声をかけた。
「私が、憎くないですか......?」