優しい君に恋をして【完】






お母さんは、私の言葉に少し驚いていた。



「私は、遠山花の娘です。



それは、一生変わらないです。



本当にごめんなさい。




でも、



それでも私は、優と一緒にいたいです」





お母さんは、ふふっと笑って、



私の髪を撫でた。





「あすかちゃんは、優を大切に思ってくれているでしょ?」




「はい」



私は髪を撫でられながら、大きく頷いた。








「私はね、ずっと優を、



大切に大切に、育ててきたの。


そんな優に、初めて大切な人ができて、




その人も、優を大切に思ってくれていて、




そんな自分の息子を大切に思ってくれる子を、


母親の私が、




どうやったら憎むことができるのかしら.......」




お母さん.......




「感謝しているのよ。


本当に感謝しているの、あすかちゃん。






私、ずっと優の耳をまともに見ることができずにいたの。




ちゃんと聞こえる耳で生むことができなかったこと。



勝手に手術を決めてしまったこと。




ずっと後悔して、ずっと自分を責め続けてきた。





それが、あすかちゃんと出会って、


優があんなに前向きになって、




また、音のある世界に戻ってきてくれて.......




初めて、まっすぐ優の耳を見ることができたの。




やっと、自分を責め続けてきた苦しみから解放されたのよ.......




あすかちゃん、ありがとう。




優を好きになってくれて、




本当にありがとう.......」



















< 306 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop