優しい君に恋をして【完】
お母さんは、私の言葉に少し驚いていた。
「私は、遠山花の娘です。
それは、一生変わらないです。
本当にごめんなさい。
でも、
それでも私は、優と一緒にいたいです」
お母さんは、ふふっと笑って、
私の髪を撫でた。
「あすかちゃんは、優を大切に思ってくれているでしょ?」
「はい」
私は髪を撫でられながら、大きく頷いた。
「私はね、ずっと優を、
大切に大切に、育ててきたの。
そんな優に、初めて大切な人ができて、
その人も、優を大切に思ってくれていて、
そんな自分の息子を大切に思ってくれる子を、
母親の私が、
どうやったら憎むことができるのかしら.......」
お母さん.......
「感謝しているのよ。
本当に感謝しているの、あすかちゃん。
私、ずっと優の耳をまともに見ることができずにいたの。
ちゃんと聞こえる耳で生むことができなかったこと。
勝手に手術を決めてしまったこと。
ずっと後悔して、ずっと自分を責め続けてきた。
それが、あすかちゃんと出会って、
優があんなに前向きになって、
また、音のある世界に戻ってきてくれて.......
初めて、まっすぐ優の耳を見ることができたの。
やっと、自分を責め続けてきた苦しみから解放されたのよ.......
あすかちゃん、ありがとう。
優を好きになってくれて、
本当にありがとう.......」