優しい君に恋をして【完】
30分ぐらい走って、車が止まった。
駐車場に車をバッグで止める優が、
かっこよくて、
じっと見つめていたら、「やりにくい」と怒られてしまった。
車から降りると、外はもう薄暗くなってしまっていた。
ここ、どこだろう......
優は目の前の2階建てのアパートの階段を上り始めた。
私も優の後ろから階段を上ると、
上がってすぐのドアに鍵を差し込んだ。
そして、ドアを開けるとパチっと電気をつけて、
中に入っていった。
私はドアから明るい部屋を覗き込んだ。
いくつかダンボールが置いてあるのが見えて、
玄関の中に入ると、
冷蔵庫、洗濯機、
奥の部屋には、ベッドと机が見えた。
優は、少しダンボールを脇に寄せて、
私のところに戻ってきた。
「はい、合鍵」
「えっ」
優は二つある鍵の一つを、私に差し出してきた。
「管理人のおばちゃんが、めちゃめちゃ良い人で、
本当は4月から入居なんだけど、
もう前の人が出たから、荷物入れてもいいよって言ってくれて。
まだ、ごちゃごちゃなんだけど.......
今度、駅からの道を教えるから、いつでもおいで」
優は私の腕を掴んで、手の平に鍵を置いた。
じっと自分の手の中にある鍵を見つめていたら、
涙がこぼれ落ちた。
なんだか今日は涙腺がおかしい.......
嬉しくて、嬉しすぎて、
幸せすぎて......
優が私の手を引っ張ったから、玄関で靴を脱いで、
部屋に入った。
入った瞬間抱きしめられて、
もっと涙が溢れてきてしまった。