優しい君に恋をして【完】
「成海、いよいよ明後日だな結婚式」
県内にあるデザイン事務所に勤めて4年目。
帰り際、隣のデスクの先輩が声をかけてきた。
「はい」
俺は、急いで書類をバッグに入れた。
「やっぱり、婚姻届って実印の方がいいですよね」
「はぁ?まだ書いてなかったのかよ。
一応、俺の時は実印押した気がするな。
一生を決める大事なものだからな」
やっぱりそうか。
「俺も実印にします。
じゃあ、明後日よろしくお願いします」
「おう!楽しみにしているよ!」
「お先です」
俺は急いでエレベーターへと走った。
これからあすかの家に寄って、
婚姻届を一緒に書くのに、
実印を持っていないことに気づいた。
やばいな......実家に寄ってからじゃないと......
俺はあすかの家の近くを車で通り過ぎて、
久しぶりに実家へと帰った。