優しい君に恋をして【完】
車を運転しながら、
あすかにどうやって伝えようか、そればかりを考えていた。
あすかも覚えていないのかな.......
だったら、驚くだろうな.......
俺たち、こんな小さい頃から繋がっていたんだ。
あすかに初めて出会ったのは、
あの、通学電車の中じゃなかったんだ。
あれは、再会だったんだ。
ただ、短調な毎日を送っていた俺の前に、
またあすかが現れて、
音のない世界に逃げた俺に、
音の世界で生きる楽しさを教えてくれて、
俺は.......
あすかの家の前に着き、エンジンを止めると、
ルームライトをつけてもう一度箱の中を見た。
そして、一番上にのせた折り紙の手紙を開いた。
【ゆうちゃんへ
あすかがずっとまもってあげるからね!
だいすきだよ!
とおやま あすかより】
俺はまたルームライトを消して、箱に手紙をしまうと、
車から降りた。
「優!」
箱を持って門の前に立ったら、
あすかの声が聞こえて、ベランダを見上げた。
「車で何見てたの?」
ベランダから顔をだして笑っているあすかに、
「これ」と、箱を持ち上げて見せた。
「何それ?」
「あはははっ、これ?
これさ.......びっくりするよ」
「え?びっくり?」
「うん。
俺たち、すごいよ!!あはははっ!!」
優しい君に恋をして俺は、
初めて、
生まれてきてよかったと思えた。
「何がすごいの?」
「今見せるから。玄関開けて」
「わかった!今行く!」
【優しい君に恋をして】
end