優しい君に恋をして【完】
頭からかぶされたタオルで顔を隠していたら、
私の頭を撫でていた優の手が離れた。
そっとタオルから顔を出すと、
優はズボンのポケットに手を入れて、
顔だけ線路の方を向いて立っていた。
私は、優のタオルで前髪とか、
後ろに結んだ髪を少し拭かせてもらい、
タオルを頭から取って、畳んで手に持った。
「これ、洗って返すね」
線路の方を見ている優に話しかけた。
すると優は、ゆっくりとこっちを向いて、
私の手にある優のタオルを掴んできた。
だから、私はタオルを自分の方にぐっと引っ張って、
首を振った。
そんな私の様子に、優は少し不思議そうな顔をして、
首を傾げた。
「洗わせて......」
もう一度言うと、優は優しく微笑んで、
そっとタオルから手を離した。
その時、
電車がホームに入ってきた。
電車に乗る時、
やっぱり優は私の後ろに回って......
私が、ちらっと優を見ると、
優は笑って小さく頷いて、
優に促されながら、電車に乗り込んだ。