優しい君に恋をして【完】
電車に乗り、扉の右側すぐの手摺に掴まると、優も私の掴んだ手摺の上を掴んできた。
おかげで、優と向き合って電車に乗る事になり、
優の緩めた深緑色のネクタイが目の前に見えた。
首元が少し開いたワイシャツから、綺麗な首筋や喉仏が見えて、
その男らしさに、
笑うとかわいい顔になるけど、
女の子みたいに、綺麗な肌をしているけど、
やっぱり優は、男なんだ……と、意識してしまった。
電車が動き出しても、顔を上げる事ができなかった。
今、顔を上げたら、
優の顔が近すぎる………
左手に持った優のタオルを胸の前でぎゅっとした。
しばらくそのまま電車に揺られていたら、右肩にかけていたバッグの紐がずれ落ちそうになり、
掴んでいた手摺から手を離して、
紐を肩に掛け直した。
その時、電車のブレーキがかかったせいで、
前のめりになり、
その瞬間、優が手摺を掴んでいる反対の手で、
私の体をぎゅっと抱きとめてくれた。
頬に優のリュックの肩紐が触れて……
優の胸に頬を寄せるように、
片手で抱きしめられた。