優しい君に恋をして【完】
電車の進行方向に対して、
車両右側の扉の手摺に優。
一個隣の扉の、
車両左側の扉の手摺に白石くんは寄りかかって、
私は、少し離れたところの手摺に掴まった。
「あのさ、白石くんやっぱこういうのは、
友達って言っても......」
そう白石くんに言っていると、
優は、くるっと向きを変えて私に背中を向け、
反対側の手摺に寄りかかった。
優.......
優の背中を見て、
それだけで、涙が出てきた。
優......
違うの......そんな......違うの......
「どうしたの?遠山さん?」
涙があふれて、頬をつたった。
白石くんが、私の頬を触ろうとしたから、
その手を止めた。
「私、彼以外の人と、二人になりたくない。
たとえこの気持ちが、好きとは違う気持ちでも、
私は、
私の心は、彼だけのものでいたい。
ごめん......」
私は、もっと白石くんから離れた。
優のそばにはいけなかった。
ずっと背中を向けていたから。
離れた場所から、目をこすりながら、
優の背中を見つめた。