優しい君に恋をして【完】
駅構内を、出口の階段の方へ歩いて行く優に向かって叫んだ。
「優!!!
優ーーーーーーー!!!!」
通り過ぎていく人は振り向くのに、
一番振り向いてほしい優は振り向いてくれなくて......
優は、そのまま階段を下りてしまい、
私から優が見えなくなった。
「こっち向いてよ......優。
違うの......誤解なの......
私は、そんな女じゃないの......」
私はその場にしゃがみこんで顔を両手で覆った。
涙が止まらなかった。
なんで、こんなに泣きたくなるんだろう。
今まで、友達のこととか、親のこととか、
つらいことはたくさんあったけど、
絶対に泣かなかった。
泣くって感情が、私にはないのかもってぐらい、
泣かない子だった。
でも、優と出会って、
ちょっとこのことで、
こんなにも、涙が出る。
優を見ると、胸が苦しくなる。
優といると、胸の鼓動が抑えられなくなる。
優に背中を向けられると、
こんなにも、涙があふれだす。
自分で自分の感情を、
コントロールできないことがあるってことを、
初めて知った。