優しい君に恋をして【完】
私の降りる駅に着くと、
優は、そっと手を離した。
「じゃあ、また帰りね」
優を見上げてそう言うと、
優は、頷いた。
扉が開き、電車から降りて振り向くと、
やっぱり優は、こっちを向いて立っていた。
私が小さく手を振ると、優は小さく頷いた。
そして、扉が閉まり電車が動き出した。
優って、おとなしい人だなって思った。
メールでは普通に会話できるのに、
会うと、喋らない。
でも、そう言われてみれば、私もそうだ。
メールではなんでも言えそうなのに、
目の前にすると、緊張して喋れない。
いつか、普通に会話出来る時がくるといいな。
でも、なにも喋らなくても、
一緒にいられればそれでいいとも思う。
優はあまりべちゃくちゃ喋るのが、
好きじゃない気がするから。
優は、落ち着いていて静かで優しい。
優しいだけじゃなくて、
いろいろ優のことをわかってきた。
いろいろわかってきても、
気持ちは変わらない。
逆に、知れば知るほど、
もっと近づきたいって思う。
そんなことを考えながら、
学校へと向かった。