優しい君に恋をして【完】
駅から10分ほど歩いたところにある高校。
同じ中学からの子がいないから、
友達ができるか不安になりながら、
校舎に入った。
下駄箱で上履きに履き替えていたら、
隣の下駄箱に靴を入れた子と目が合った。
「おはよう……」
思い切って挨拶をしたら、その子はニコッと笑ってくれて、
「おはよう」と返してくれた。
黒髪のショートボブ、
ふんわりとした柔らかい表情で、
笑う人……
なんとなく、
友達になれそうな気がした。
「一緒に教室……行かない?」
166cmの私よりも、少し背の低いその子は、
私の言葉に、「うん」と、かわいく頷いてくれた。
「名前聞いてもいい?」
「私は、広瀬真菜(ひろせ まな)
真菜って呼んで」
「わかった。
私は、遠山あすか(とおやま あすか)
あすかって呼んでね」
それから真菜といろんな話をした。
下駄箱で出会えたのは運命なんじゃないかってぐらい、
気が合って、
教室に入ってからも、
ずっと話していた。
真菜は、駅の向こう側から、自転車できていること、
中学の頃から付き合っている彼氏がいること。
「違う高校でさみしくないの?」
休み時間、私の席の前に座った真菜にそう言うと、
「さみしいけど……
帰れば毎日会えるから、大丈夫。
あすかは?彼氏いないの?」
「彼氏なんていないよ……」
「じゃあ、好きな人は?」
「好きな人……」
好きな人と言われて、
なぜか急に朝電車で出会ったあの人の顔を思い出した。