優しい君に恋をして【完】
涙が止めどなく溢れてくるのは、
どうしてなんだろう。
なんで泣きたくなるんだろう......って、
目をこすりながら考えた。
間違っても、聴こえなくて悲しいんじゃない。
優の耳が聴こえないことが嫌で泣いているんじゃない。
それだけは違う。
今まで、どうして気がつかなかったんだろうって思うと、
涙がもっと溢れてくる。
今までの優の行動を思い出した。
一言も喋らない優。
どんな気持ちで、私の言葉に頷いていたの?
静かな世界で、私の口の動きを必死に読み取っていたの?
どうして、気づいてあげられなかったんだろう......
【俺のことをもっと知ったら、
仲良くなりたいとは、思わないかもよ】
あの時のメールの意味は、このことだったんだ.....
そんなの、全然関係ないじゃん。
聴こえないからってなんだよ......
そんなことで、気持ちが変わるわけないじゃん......
目を擦っていたら、頭に温かい感触がして、
顔を上げた。
優が私の頭を撫でて、切なそうな顔で首を傾げていた。
優…………
切なげな瞳と目が合った瞬間、
ひとつの言葉が、はっきりと心に浮かんだ。
好き…………
やっとわかった......私。
私は、優が好きだ。