優しい君に恋をして【完】
迷惑
次の日、
朝も帰りも、優と一緒に電車に乗った。
私が話しかけると、
優はやっぱり口元をじっと見て、
頷くか、首を振るかしかしなくて、
声を発することはなかった。
いろんな思いがあるんだろうな.....優には。
帰りはまたバス停で優を見送ってから、
駐輪場に向かった。
そして、家ではなく、母校の中学へ向かった。
中学の校門をぬけて、
自転車を止めると、
保健室に向かった。
開けっ放しのドアから顔を出すと、
星野先生が、机に向かって座っているのが見えた。
「星野先生」
保健室に入って先生に声をかけると、
「わあ、遠山さん!」と、
メガネを外して微笑んだ。
私は、先生の机の横にあった丸椅子に腰掛けた。
「元気?高校生活はどう?楽しんでる?」
「うん。まあ......普通かな」
「普通か。普通が一番だよ」
先生は、はははっと笑った。
桜木先生と同じ年ぐらいの、男っぽいけど女の先生。
桜木先生とはタイプが全然違う。
星野先生は、体育会系って感じの元気な熱血タイプ。
桜木先生は、華奢で繊細で大人しい控えめなタイプ。
保健室の先生なのに、いつも上下ジャージ。
そんなところが親しみ易くて好きだったりもする。