優しい君に恋をして【完】
書き終えて気づいた。
「紙いっぱいだ......」
先生は、紙を横から覗き込んだ。
「読んでもいい?ていうか、読まないと教えられないんだけどね」
先生はあははっと笑った。
私は少し恥ずかしい気持ちもあったけど、
どうしてもこれを手話で伝えたかったから、
先生の方に紙を向けた。
先生は、それをじっと見て読み始めた。
優しく微笑みながら読み始めたかと思ったら、
途中で真剣な表情になり、
読み終えると、ぎゅっと目を閉じた。
そして目を開けると、笑いながら私の肩をポンポンと叩いた。
「すごくいいじゃん。
きっと彼に思いが届くよ。
よし!早速始めますか!
じゃあ......」
それから先生と向き合って、
手話の練習をした。
手話には、ひとつひとつその表現になった理由があって、
一つの手話でも、いろんな意味を持っていて、
難しいけど、なるほどと思えるものもあって、
覚えるのが楽しかった。
これが、優の言葉なんだって思ったら、
どうしても、
なんとしても、
私も話せるようになりたいと思った。
優が、手話の世界にいるのなら、
私もその世界を知りたいと思った。
少しでも、優に近づきたい。
少しでも、優をわかりたい。
そう思いながら、何度も繰り返し、
指を動かし続けた。