優しい君に恋をして【完】
「優......」
そう言って顔を覗き込むと、
優は、少し首を振って笑った。
笑ってくれたけど、
その笑顔はすぐに消えてしまった。
一緒に電車に乗っても、
優は、何か考え事をしている様子だった。
何も会話がないのは、いつもと同じだけど、
今日は何かが違うと優の表情を見てそう感じた。
白石くん、本当に何も言ってないんだろうか......
最寄駅に着き、
いつものように二人で改札を通ると、
「遠山......?」
と、男の人の声で呼び止められた。
私が立ち止まると、少し先で優も立ち止まった。
声の主は中学の時の部活の先輩だった。
「大滝先輩?」
大滝先輩は、彼女と思われる人と二人で、
私たちに近づいてきた。
「南高校に入ったんだ」
「はい」
「早速彼氏ができたのか」
大滝先輩は、優をちらっと見てから笑った。
「あれ......どっかで......」
大滝先輩の彼女が優をじっと見つめだした。
すると、優はぐっと下を向いた。
「成海くん......だよね」