優しい君に恋をして【完】
えっ......優を知っているの?
「なに、里佳知ってんの?遠山の彼氏」
「覚えてないの?小学校の時一緒だった成海くん。
ほら、耳が聴こえなくて機械つけていて。
中学からろう学校に行った子」
大滝先輩は、うーんと考えこんでから、
あぁ!と思い出した様子だった。
「成海ね!
あのいっつもひとりで絵を書いていた大人しい奴か」
いつもひとりで......
そっか。大滝先輩は、私が1年の時3年だったから、
今、高校3年か。
優は下を向いたまま、くるっと向きを変えて、
出口の方へと歩き出してしまった。
「えっ、優?」
私は先輩たちに頭を下げると、
優を追いかけた。
優の隣まで行くと、
「優?」と顔を覗き込んだ。
優は私を見ることなく、そのまま歩き続けた。
出口の階段の上で、ぎゅっと手を繋ぐと、
優は立ち止まった。
「どうしたの?優?」
じっと見つめてそう言うと、
優は繋いだ私の手の手首を、反対の手で掴んだ。
そして、繋いだ手を引き離した。
え......
優は首を振ってから、
階段を下り始めた。