優しい君に恋をして【完】
学校が終わり、
校舎の前で駐輪場に向かう真菜と別れ、
駅へと歩いた。
もしかしたら、帰りの電車でも、
あの人に会えるかもしれない......
少し期待をしながら、
帰りの電車に乗り込んだ。
車内をぐるっと見渡しても、
あの人らしき人は見当たらなかった。
同じような、制服の人も、
一人もいなかった。
やっぱ、会えないか......
朝と同じように、扉からすぐの手摺に掴まり、
反対側の空っぽの手摺を見た。
朝は、こんなに近くにいたんだ.....
取れてしまったキーホルダーを直してくれて......
バッグについているクマのキーホルダーが、
すごく特別なものに見えた。
最寄駅に降りると、
駅から少し歩いて、
小さなビルのエレベーターに乗り、
2階のボタンを押した。
2階で降りると、受付の人に挨拶をして、
しばらく廊下で待った。
すると目の前の分厚いドアが開いて、
小さな女の子と、桜木先生が出てきた。
「さよなら。気をつけて帰ってね。
お待たせ、あすかちゃん。どうぞ」