優しい君に恋をして【完】
次の日、
いつもの時間に6番線に行くと、
そこに優はいなかった。
ひとりで電車に乗って気づいた。
高校に入ってから、
毎朝優と一緒だった。
初めてひとりきりで電車の手摺に掴まり、
窓の外の景色を見た。
こんなにも、違う世界に見える。
手を伸ばせば、すぐそこにいたのに。
顔をあげれば、すぐそこに笑顔があったのに。
今は、ひとり。
もう、会えないの?
本当にこのままもう、二度と会えないの?
それでいいの......?
朝から泣いてしまいそうな目をこすった。
こすってもこすっても、
目を開ければ、
いつもの景色に優がいないことを思い知らされた。
この想いをどうしたらいい?
どうしたらいい.....
掴んだ手摺を、ぎゅっと強く握った。