優しい君に恋をして【完】
優は両手をズボンのポケットに入れて、
俯いていた。
優......
心の中で、名前を呼んだ時、
ふと優が顔を上げた。
その時、私は初めて手話で話しかけた。
《私は 優が 好き》
何度も繰り返し練習したこの言葉。
優はまっすぐ私を見つめていた。
自分の想いを、
ずっと伝えたかった想いを、
今......
《私は 優が好き
たとえ 私の声が 優に届かなくても
私は どんな手段を使ってでも
優に 声を 伝えるから......
たとえ まわりの人が
優のことばをわからないと言っても
私は 私だけは
優の言葉を 全部 理解するから......
一言も 聞き漏らさない
全部 理解するから
私は 知りたい
優の 辛いこと 苦しいこと
どんな世界なの? 静かなの?
優の世界を 全部知りたい
わかりたいの 優を......
迷惑なんて 誰が決めたの?
好きな人と 一緒にいられるのに
どうしてそれが 迷惑になるの?
私は 好きなの.....
好きなの.....》
こぼれ落ちる涙を、片手で拭いながら、
【好き】という手話を、
繰り返した。
その時、
優がまっすぐ道を渡ってきて、
私の前に立ち、
手話を繰り返していた手を掴んで、
その手を止めた。