優しい君に恋をして【完】
手首を掴まれたまま優を見上げると、
優は切なそうな、苦しげな表情を浮かべていた。
そして、そっと掴んだ手を離し、
《ありがとう》
と、声を出さず、口の動きと手話だけで伝えてきた。
初めて、優から出た言葉......
そして、ゆっくりと私にもわかるように、
手話で話し始めた。
《あすかの 気持ち 嬉しかった
でも もう会うのは これで終わりにしよう》
気持ちを伝えても、同じ答えしか返ってこなかったことに、
胸が痛んだ。
「どうして?」
私の口元を見た優は、また手話で答えた。
《あすかと 俺は 違う
あすかは 聴こえる人を 好きになった方がいい》
そんな.....
私は思いっきり首を振った。
優はまた苦しそうな表情で手話を続けた。
《あすかが 何か困った時 声で助けを求めても
俺は 気づかなくて 助けに行くことができない
あすかの笑い声も 泣き声も わかってあげられない
あすかの......》
まだ、続けようとする優の手を、
今度は私が掴んでその手を止めた。
「できないことって、それだけでしょ?」