優しい君に恋をして【完】
両手で掴んでいたから、口の動きだけで伝えた。
「できないことを数るよりも、
できることを数えてみなよ。
はるかに、出来ることの方が多いでしょ?
それだけできれば十分じゃん......」
口だけで、伝わったかな......
私は、優から手を離し、手話で話し続けた。
《私は 優の全部が好きだよ
背の高いところも
笑った顔も
やわらかそうな髪も
大きな瞳も
かわいい八重歯も
聴こえない耳も......
全部 大好きだよ》
優は私の手の動きを真剣に見つめていた。
《きっと 優の声も 好きになる
ゆっくりでいいから
いつか 声を聞かせて欲しい》
その言葉を見ると、優が俯いてしまった。
私は優の右手を掴むと、
自分の左胸に押し付けた。
優は大きな瞳をまん丸にして、手を引こうとするから、
私はさらにぐっと自分の左胸に押し付けた。
そして、優の左手を優の左胸に押し付けた。
きっと、鼓動が、
優と同じこの鼓動が、手に伝わっているはず......
「同じでしょ......
何も違わない。
私と優は......同じだよ.....」
そう言って優を見つめると、
優は一粒、綺麗な涙をこぼした。