優しい君に恋をして【完】
優は下を向いて首を振り、
前髪を揺らして顔を隠した。
そうやってずっと、
聴こえる人との違いを感じて生きてきたの......?
小学生の頃、どれほど傷つけられたの......?
聴こえる人が圧倒的に多い、
音のあるこの世界で、
聴こえない耳で生きていくだけでも大変なのに......
優は顔を上げ、私の胸から手を離すと、
ゆっくりと指を動かし始めた。
《あすかから 手紙をもらった時
本当に 嬉しかった
でも きっとあすかも
そのうち離れていくだろうって思った
聴こえる人は 耳のことを知ると
そのことが ダメだったり
言葉のやり取りが 面倒臭くなったりして
離れていく
いつも そうだった
でも あすかは 耳のことを途中で気づいても
何も変わらないで 離れていかなかった》
途中で......気づいても......
優は、私が気づいていることを知っていたんだ......
《どうせ 離れていくんだろって 思ってたのに
耳のことを知っても 離れていかないから
会うたびに あすかに惹かれていってしまった》