優しい君に恋をして【完】
優が隣にドカっと座ってくると、
バスがゆっくりと動き出し、
私は優の方を向いて座り直した。
そして、声を出さずに手話で優に聞いた。
《【つ き あ う】って手話でどうやるの?》
指文字と手話でそう聞くと、
優は、《付き合う》と口を動かしながら手話を教えてくれた。
私はその手話を何度かやってから、
また優に話しかけた。
《私と 付き合って ください》
優はその手話を見ると、目をそらして考えこんだ。
あれ.....まだダメなのかな......
想いが通じ合ったと思ったのに......
優はまた私の顔を見ると、
首を振った。
えっ......
そして、指を動かした。
《俺から 言わせて欲しい
俺と 付き合ってください》
なんだ......そういう意味か......
よかった......
私は、笑いながら頷いた。
《もう 勝手に 離れようとしないで......
ずっと一緒にいてね......》
私がそう言うと、優は大きく頷いて、
私の指に自分の指を絡め、
ぎゅっと手を繋いでくれた。
静かなバスの中、
声のない会話で、
私たちは想いを伝え合った。