優しい君に恋をして【完】
電車に乗ると、
私を角に立たせて、同じ手摺を一緒に掴んだ。
見上げるとすぐに、優の顔があって、
今日は窓の外じゃなくて、
私を見ていたから目が合った。
すると優は首を傾げた。
もしかして優は、
目が合うと私が何か話したいのかと思って、
「何?」というつもりで首を傾げているのかもしれない。
ただ単に、優を見つめていたかっただけなんだけど......
さらに首を傾げた優の眼差しが、すごく優しくて。
私は、「なんでもない」って笑いながら首を振った。
すると優も目を細めて、可愛い八重歯を見せて笑った。
かっこいい顔が急にかわいくなって。
......優の笑った顔が、かわいくて好き......
そう、声を出さずに優に伝えたら、
私の口元をじっと見つめていた優の綺麗な顔が真っ赤になって、
顔をそらし、また窓の外を向いてしまった。
あれ、褒めたつもりだったのに、怒ったのかな......
そう思って、私が下から顔を覗き込むと、繋いだ手を離して、
私の前髪をくしゃくしゃっとしてきた。