優しい君に恋をして【完】
えっ?ええっ???
くしゃくしゃになった前髪を、離された手で押さえると、
優がこっちを向いて、また可愛く笑った。
そして、優の指がゆっくりと私の顔に近づいてきたから、
押さえていた手を離すと、
優はすっと私の前髪に指を通した。
ドキッとした。
優が、真剣な眼差しだったから.....
ドキドキして、
胸がきゅーっとして......
前髪を直されながら、目をぎゅっと閉じた。
前髪から優の指先の感触が消えて、
そっと目を開けると、
優が見つめていて......
口だけ動かして何かを言った。
何?
ほんの一言だと思うんだけど、
こうして見ると、口を読むのってすごく難しい。
優はよくできるな.....と尊敬してしまった。
私はちゃんとその言葉を知りたかったから、
《もう一度言って》と手話でお願いした。
すると優は笑いながら首を振って、また、私の手を繋いできた。
口の動きを思い出して考えた。
……あわいい?
かわ……いい……
まさか、そんなこと……
あっているかもわからない、嬉しい言葉を、
ひとりで勝手に、言われたと思い込んで。
間違っていたら、めちゃくちゃ恥ずかしいし、
あっていても、めちゃくちゃ恥ずかしいし、
そんな事を頭の中で考えていたら、頬がどんどん熱くなってきて。
きっと真っ赤になっている顔を、見られないように、
下を向いた。