お隣さん
覗
私は佳菜子。このアパートに越してきて早三日経つけれど、一向に落ち着かない。
ーーゴンッ!ゴンッ!
……この音の所為で。
2DKでありながら、私の手の届く破格のお値段だった為、即決して越してきたものの、この三日間毎晩お隣から壁をゴンゴン叩かれているのだ。
「私が何したって言うのよ……。なに?新居者イジメ?」
仏の顔も三度まで、というやつだ。三日も続けば頭にくる。
すっくとベッドから起き上がり、壁の前に立つ。
「ちょっと!いい加減にしてちょうだい!こっちは物音なんて立ててないじゃない!」
ドンドン、と拳で壁を叩き返す。
ーードンドン、ドンドン……ガラガラッ……!!
「へ……?うそ!」
何度か壁を叩いていたら、なんと、壁が崩れてしまったのだ。
ぽっかりと、大きな穴がお隣への入り口のように開いている……。
「あ、あの……すみません。崩れるほど強く叩いたつもりは……」
言い訳しながら、おそるおそる部屋を覗いてみる。ーーが、部屋は真っ暗で人の気配もしない。
「あれ?さっきまで叩いてたのに……?」
不思議に思い、部屋に入ってみる。
「もしもーし?誰かー?」
声を上げてみるが、返事はない。せっかくだから、部屋の中を少し眺めてみる。
電気は点いていないけれど、私の部屋の灯りが入ってきて、なんとか見える。
ーーと思っていたら、急に真っ暗闇になった。
「な、なに?」
慌てて回れ右をして手探りに穴を探すが、壁一面に紙か何かが貼ってある感触はあるが、穴はまったく見つからない……。
「な、なんで?!どうなってるのよ!!」
何度も壁をペタペタ触ったりドンドン叩いたが、どうやら本当に穴は消えてしまったらしい。
「げ、玄関から出ればいいのよ」
部屋着のポケットに突っ込んでいた携帯をライト変わりに玄関へ向かう。