お隣さん
暗証番号
キッチンは綺麗に片付けられていて、目につくものはない。足元の床下収納の扉には鍵が掛かっていて開かなかった。
ダイニングには食卓があって、椅子が二脚。食卓の上にカレンダーが置いてあった。
手にとって調べてみる。
「何も書き込んだりはしてないみたいね。でも、かわいい」
今、五月にはポップな竜の絵が描いてあった。翌月にはポップなヘビ。
「他はーー特にないわね」
何も見つからないから、最初の部屋に戻ってみることにした。明るくなって、穴が戻ってると嬉しいんだけど……。
部屋のドアを開けて壁を見てみるが、やはり穴はなく、変わりに壁一面に写真が飾ってある。
壁の反対側にテレビが置いてあった。
テレビの左側には金庫。当然ながら開かない。二桁の暗証番号が必要らしい。
右側には大きな壺が床に固定されていた。思い切って中をのぞき込んでみる。
「あ!鍵!」
小さな鍵が底に落ちていた。手を突っ込んでみるが、届かない。
「ダメね……んー……」
振り返って、ひとまず部屋の散策を再開する。
部屋の真ん中に折り畳み式のテーブルが開いてある。その上にノートパソコン。電源は入らなかった。
「あとは……写真かしら。いっぱいあるわね」
壁一面の写真を一枚一枚見てみる。……全部、さっきの女の人だ。
「やっぱり……あの人の部屋なんだわーーあれ?」
写真と写真の隙間に見える壁の色が、なんだかおかしい……。
一枚、写真を剥がしてみる。
「ひっ……!!」
赤黒い、血のような大きな染みがあった。他の写真も何枚か剥がしてみると、染みは壁のあちこちに広がっていた。
「この部屋で、何があったの……?」
写真の中で笑う女性に、ぽつりと問うてみるーーすると、女性の表情がグニャリと歪み、まっすぐにこちらを指差した。
「な、なに?……あ」
ウィン……と小さな機械音が後ろからする。
振り返ってみると、テレビの電源が入っていた。