じぇねれーしょん
多分、彼には七緒の存在を誰よりも早く紹介するだろう、という確信はあったが、それは今ではない。
逃げたい七緒が捨て身で「利嘉に脅されてます」と訴えないとは限らないので。
せめて、その心配がなくなってから…出来るなら「彼女」と言って退けられる関係を築いてからにしたかった。
脅されて、と七緒の口から聞くのもショックだが。
それを知られたら間違いなく怒られる。
怒られるだけならまだしも、彼なら赤子の手を捻るように七緒を利嘉から取り上げることが出来るだろう。
適当な言葉も出せないでいると、押さえていたブランケットがモゾモゾと動き出した。
どうやらお姫様はキスもしないうちに目覚めてしまったようだ。
ぼふっとブランケットから突き出た寝ぼけ顔が、傍の利嘉を素通りし、正面の男を凝視する。
ああ、寝起きに見知らぬ男ってありえない組み合わせだよねー。
でも、彼は不審人物でなくてね……
利嘉が彼の紹介を考えあぐねているうちに、ぽうっと開いていた七緒の口から寝言のように言葉が落ちた。
「……皆実先輩………?」
は?
見開いた利嘉の視界で、男がほわっと微笑する。
「アハ。オヒサシブリだねー。七緒ちゃん。」
家主の屈託ない笑顔に利嘉の胸で何か黒いものがざわついた。