じぇねれーしょん
七緒が利嘉みたいな餓鬼を相手にするなんてアリエナイ。
そんなの分かってる。
だけど改めて言われると、生身で火に放り込まれたみたいにジリジリとイタイ。
苦痛を耐えるような顔に皆実はちょっとだけ阿るように笑った。
「利嘉がどうってわけじゃなくて、だよ?単に、七緒ちゃんが、変に固くて、生真面目で、石橋を叩いて渡るタイプでさー、自分から冒険しようなんて考えない堅実タイプ。恋愛と倫理なら絶対後者取る人だからね。」
その七緒が六つも年下の、未成年の高校生を相手にしているとなれば、相手がどうにかしたと考えるのが妥当、と皆実は判断した。
日常でチラッとトキメキを感じたとしても、それが自分の理念に反する恋愛なら見なかったことにして切り捨てる、七緒はそういう娘だ。
感情より、倫理で動くタイプ……とは聞こえがいいけど、目に見えがたい自分の心理にはとことん鈍いタイプとも言える。
ついでに言えば、そんな相手をどうこう出来る要領が利嘉にはあると踏んでいる。
「ま、さ、人の恋路に首突っ込む無粋なヤツは馬に頭蹴られて死んじまえなんていうしぃ、とやかく言うつもりはないけど。でも、あんまり目に余るようなコトしてたら釘刺すからね。」
何も言えない利嘉の頭を、皆実は子犬にやるように撫で撫でして、軽やかに身を翻し玄関から出て行った。