じぇねれーしょん

はっとして振り返ると、作業台で立花が浅く腰を掛けてカメラを弄っていた。


立花は会社お抱えのカメラマンだ。

よく見れば精悍な整った顔立ちなのだが、はっきり言って服装やその態度を見るにズバリ、チンピラだ。

尤も、以前は内戦地などのルポライターをやっていたりして、実は結構な賞を取ったりした凄腕なのだが。


「お宝映像ゲット。ふーん。鉄仮面、意外とオトメな顔すンじゃねーか。」


最初、独り言のような言葉が自分に向けられているとは気付かずぼけっとしていた七緒は、不意打ちみたいに向けられたデジカメの記録画面に『げっっ!!』と飛び跳ねた。


先ほどリカに思いを巡らせていた自分はこんな顔をしていたのか!?


恋しくて、今にも泣きそうな表情で佇む自分。


ってか、この人、今、人のことを鉄仮面って言ったか!?

…間違っちゃいないだけに何も言い返せないけど……。


一気に顔が赤くなった。


「立花さんっ!会社の経費で仕事以外のろくでもない被写体を取るのは辞めて下さいっ!」

「経費~?つったって、プリントじゃあるまいに微々たる電力程度だろーが。」


七緒が飛びつくとソレを見越していたように立花はデジカメを後ろへ引いた。


「バッカ!落っことしたらどーしてくれンだ。」

「今すぐ消去してください!肖像権の侵害で訴えますよ!」



このクサレチンピラが~っ!


立花は人の弱味に付込むのが大得意だ。

本格的なユスリタカリをするわけじゃないが、ワガママを通すために取引でチラッと相手の弱味をチラつかせたりする。


七緒に至っては、ポーカーフェイスを突くのが面白いという理不尽な理由でちょくちょくからかわれる。


ある種、手に負えないオッサンだ。

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