じぇねれーしょん

立花は呵呵大笑し、居丈高に踏ん反り返った。


「まー俺の真贋の目にかかれば、隠したって直ぐバレルってなもんよ。ダブル不倫とか、二股、三股とか。このギョーカイ結構多いぜ?」

「…それ本当ですか?」


驚く七緒に、立花は顔を近づけて耳打ちする。

告げられた名前は、仕事であまり接点はないけれど顔くらいは知っている人物で、七緒より幾分立場が上の人達ばかりだ。

今度こっそり観察してみよう……と密かに下世話な誓いを立てる。


ほれっ、とカメラのプレビューを向けられて、指示通りに写真をダストボックスに入れた。

操作が完了して、ホッと胸を撫で下ろす。

そうして、消えてしまった自分の姿を静かに思い出し、淋しい自嘲が零れた。



「…でも、もう本当に隠すことなんてありませんから。」


もう終った。

切り捨てられた。

追いかけたくても、追えない相手―――。


残っているのはどこにも行けないこの恋心だけだ。


立花に突かれるような関係は何もない。


< 149 / 233 >

この作品をシェア

pagetop