じぇねれーしょん

そんなことを思って人知れず含み笑っていた利嘉は耳に聞こえた台詞に我に返った。


「あーまた女史、オッサンにイジラレてるよ。」


利嘉はむっとして視線を上げた。


セットの交換の最中で、ロールから少し離れた作業台で男と七緒がなにやらやっている。


どうやら男の手にあるカメラを七緒が取ろうとしているようだが…。


男がカメラを後ろに引いたため、躍起になって手を伸ばす七緒は男にしがみ付いているといっても過言ではない密着ぶりだ。


途端に、利嘉の胸の中にどす黒い感情が湧いた。


―――七緒さん、

危機感なさ過ぎっ!!!



だけど苛立つのはソレだけが原因ではなく。


二人は仲睦まじげにカメラを覗き込んだり、ナイショ話したり、楽しそうだ。


男がからかったのか七緒は顔を赤くして怒ったりしている。



「あのオッサンくらいだよなー。女史イジレルのって。」


あひゃひゃっと笑う声がザックリ刺さった。


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