じぇねれーしょん
「…何のつもりなの?撮影が始まるわ。」
唸る七緒に臆する様子もなく、リカは無表情に七緒を壁際に追い詰めた。
「……なんで昨日来なかったの?」
「……行けないって言ったわよ。」
「電話の電源まで落としてね。」
愛相の欠片もない声音がヒヤリと七緒の背中を撫でる。
普段、これでもかというほど愛相の良い子なので、削ぎ落とすとひどく怖く感じる。
探るようにその表情をみつめていると、うつむき加減の顔に酷薄な微笑が浮かんだ。
「そんなに邪魔されたくなかったんだ?仕事…じゃなくて、誰かさんとイチャツイテるトコロ。」
カーッと一気に頭まで沸騰した。
誰かってのは立花のことだろうか。
昨日電話口に聞こえた立花の声に邪推しているのは明白だった。
「馬鹿にするものいい加減にして!」
振り上げた手は過たずリカの頬を打った。
内心、しまった、と思う。
これから撮影のモデルの顔を打つなんて非常識だ。
我が事ながら、相当沸騰してしまったとしかいいようがない。