じぇねれーしょん



「…何のつもりなの?撮影が始まるわ。」


唸る七緒に臆する様子もなく、リカは無表情に七緒を壁際に追い詰めた。


「……なんで昨日来なかったの?」

「……行けないって言ったわよ。」

「電話の電源まで落としてね。」


愛相の欠片もない声音がヒヤリと七緒の背中を撫でる。


普段、これでもかというほど愛相の良い子なので、削ぎ落とすとひどく怖く感じる。


探るようにその表情をみつめていると、うつむき加減の顔に酷薄な微笑が浮かんだ。



「そんなに邪魔されたくなかったんだ?仕事…じゃなくて、誰かさんとイチャツイテるトコロ。」


カーッと一気に頭まで沸騰した。


誰かってのは立花のことだろうか。


昨日電話口に聞こえた立花の声に邪推しているのは明白だった。



「馬鹿にするものいい加減にして!」


振り上げた手は過たずリカの頬を打った。


内心、しまった、と思う。


これから撮影のモデルの顔を打つなんて非常識だ。


我が事ながら、相当沸騰してしまったとしかいいようがない。
< 178 / 233 >

この作品をシェア

pagetop