じぇねれーしょん
昨日はバイトだった。
諸々の事情で、ショーのみの臨時として雇ってもらっているので十一時近くの出勤。
ある意味重役だ。
断じて女装癖はないがバイトがバレるのは困るし、雇い主の叔父の命令では拒否も出来ず、スタッフルームで大変身。
仕度を終え、程よく込み合った店内を袖からこっそり伺う。
カウンターに座るスーツの女性が目に留まった。
仕事帰りといわんばかりに洒落っ気もないが、キレイな人だ。
何よりもその雰囲気。
掃き溜めの鶴とはまさにこのことで砕けた店内で彼女だけが凛として見えた。
多分、初めてのお客さん。
彼女であればプライベートの華やかな装いでも直ぐに見分けがつくはずだ、と訳も分からない自信があった。
彼女を気にしつつするりと店内に滑り込むと目ざとい客に声を掛けられ愛想を返す。
仕方が無いとは言え、その手の嗜好はないから野太い声援は複雑デスヨ。
愛想笑いで業務をこなしながらも、彼女のことを時折伺う。
……どしよ、声掛けてみようかな。
思いつつ、幾度も躊躇した。