じぇねれーしょん
キスは止まらず、七緒のちゃちな抵抗も酷い混乱も何もかんも貪って、溶かしてしまう。
嗚咽ごと呑み込んで、唇がそっと離れた。
いつもみたいに名残惜しげに。
上ずった息が交じる距離で見詰め合い、七緒はぐしゃと顔を歪めた。
「…なんでっ、今更、キスなんてするのよぉ…」
「だって本当に今更なんだもん。」
顔がはっきり見える位置まで身を起こしたリカは不貞腐れたコドモみたいに唇を尖らせた。
「まーね。確かに、こんな酷いコトした俺が何言ってんだってカンジだろーけどさー。こんなでも下らないことには気が回ってね、今、七緒さん化粧崩れたら困るよなーとか思っただけ。」
「……………は、ぁ?」
「だからさぁ、キ・ス!俺もバイトで化粧するから、口紅剥げたら嫌かなって気になっただけ。でもそこまで化粧剥げたら今更でしょ?」
はぁ………化粧?
キスを躊躇った理由?
ただそれだけ?
拍子抜けして、ぽかんとする。
「それとぉー」
リカはますます怒ったように顔を顰めて、七緒の手を取った。