じぇねれーしょん

コクコクと頷く七緒をリカが引っ張って立ち上がらせる。


いざ、扉に向かって歩き出し、その足が不意に止まった。


怪訝にその背中を見詰めていると、勢いよくリカが振り返った。


「も、一回だけ。」


返事をする間もなく唇が重なった。


挨拶にしては長い、欲望を煽るには物足りない口づけ。


行儀悪く皿のソースを舐めとるみたいに、唇は名残惜しそうに小さな音を立てて離れた。



「…後で、ちゃんと話、しよーね?」


焦点も合わない位置から子犬みたいな目で覗きこまれて。


クラクラしながら七緒はうんと頷いた。


リカはそれにほっとしたように笑って、「じゃ、行ってきます!」と果敢に廊下へ飛び出していった。


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