じぇねれーしょん
午後四時の時計を確認した七緒は重い体をデスクから引きはがし、スタジオへ向かった。
擦れ違う同僚が七緒の顔を見てモーゼのように道を開ける。
そんなにヒドイか、私の顔が……ああ、ヒドイに違いない。
「ふ…ふっふ……ふっ…」
目の下に黒々とクマを作った窶れ顔で七緒は笑いを零した。
本来なら、二日三日かかる仕事を昨日一晩で終わらせた。
貫徹だ。
しかもその仕事スピードは半端なかった。
栄養ドリンクが一ダース空いたのも史上初の最速だ。
リカ達の撮影枠は余裕をもって一週間に見積もってあるけれど、立花が二日目の撮影で「終わり」と一言言っていたので、差し替えはほぼナシと見ていいだろう。
立花は自分の腕に自信を持っている直観主義なので、OKサインを出したからには待ってみてもこれ以上のものは出ないということだ。
故に今日の撮影など立花の趣味の充足に過ぎない。
無論、ここまでガンバッタからには、残業を命じられたって帰る気満々だ。
昨日はオトナの責任と思って断腸の思いでリカの誘いを蹴って仕事を優先させたのだ。