じぇねれーしょん
塞ぎこむ余裕もないほどに立て込んでいた仕事がようやく切りを迎えたとある週末。
単(ヒトエ)に「酒飲みに行こ」と半ば強引に誘われて、カクテルバーへ出向いた。
カクテルバーといっても大人がしっとりと飲むような雰囲気ではなく、浮き足立った人のさざめきが居心地よい店内だ。
会社帰りで硬いスーツ姿の七緒は若者特有の雰囲気に若干怯んだが、照明はかなり絞ってある上、他人の服装にチェックを入れてくるような無粋な気配はなく、安堵して中に踏み込んだ。
単に薦められるままに際奥のカウンターに着く。
「ここのバーテンに可愛い子がいるんだよ。」
「この浮気者。」
お目当てとは違うらしいバーテンダーにオーダーを告げた後、脂下がった笑みでこっそりと耳打ちしてきた単に七緒は半眼で応える。
「男心の分からないヤツだな。恋人は恋人でアイシテルよ、勿論、当然。
で、通りすがりのカワイコちゃんってのは男のPHを上げるちょっとしたラッキーアイテム?
どうこうするつもりなんてないけど、見ればラッキーくらい思っても悪かないだろ?」
「偶然のパンチラなんかにもラッキーって思うんでしょ。その子がブスでもデブでも。」
「ご名答。」