じぇねれーしょん


「あ、あんな醜態晒した後で今更っ……!」


「でも聞きたい。」


じっと見つめると少し濡れた瞳が心許なげにゆらゆらと彷徨った。


程なくしてヒタリと利嘉に座り、小さく、だけど揺るぎなく一言。


「リカが好き」


その言葉はまるで天使の矢のように利嘉の胸を突き刺した。


「リカが好き。若さも可愛げも、余裕もなくて、返せるものなんて何もないけど……でも、好き、なの。」


ごめんね。


消え入りそうな声を、利嘉はカウンターに身を乗り出して唇で塞いだ。


「なんで七緒さんが謝るの?俺は七緒さんが一緒にいてくれれば何もいらないよ?大体、そこ謝るのはお互い様だし。」


返せないのは利嘉も同じ。


だけど、好き。


一緒にいたいという想いをごまかすことは出来ない。


釣り合うオトナになるまで我慢するなんて絶対ムリだから。



想いが通じたように七緒がそっと顔を近づけてくる。


それに口づけで応えて、ぎゅっと抱きしめた。

< 209 / 233 >

この作品をシェア

pagetop