じぇねれーしょん
失念に軽く落ち込んでいると、明るいビルのエントランスに人が現れた。
軽快にヒールを響かせて、少し慌てた様子で外へ出てきたヒトに、心臓が跳ねた。
上品なワンピースだが、薄紫の柔らかい色合い。
それにお揃いの短いボレロ。
落ち着いた茶色の髪は肩越しで大きくカールして、動きに合わせてふんわり揺れる。
きっちり施してある化粧も色遣いの所為なのか、キツイ感じはなく明るく華やかな印象が強い。
――――俺の記憶にある人物じゃない。
俺の記憶にあるアノヒトはモノトーンな感じ?
小奇麗にはしても、あまり自分を飾る事に興味のないタイプで。
内面を表したようなキリリとした装いで、その硬質な感じもスキだった。
いや、どっちがイイとか似合うってんじゃないんだけど……。
俺は茫然とその人を見詰めた。
というか、見惚れていた。
実際、色気ナイビジネス街には勿体ない程のイイ女だったから。