じぇねれーしょん
かくいう俺も核心から器用に逃げ回る。
聞きたいのは山々だけど、聞きたくない。
もしここで『ゴメンなさい。…スキな人が出来たの』とか聞かされたら、どーすりゃいい?
場所も体裁も顧みず泣くよ。マジで。
打ちのめされるくらいなら聞かない方がイイ。
無邪気な顔でノラクラ逃げて、その間に既成事実でも作っちゃおうかな……
……て、俺、二年前から全然進歩なくね?
でも、今七緒さんがどんな男と付き合ってても、唆すくらいの熱は持ってんだよ。
幸せになってね、なんておためごかしは口が裂けても言えない。
分かってんなら、早早に探りを入れて対策を練るべきなんだろーけど……その覚悟もつかなくて。
食事も終盤に差し掛かり、先制攻撃を仕掛けてきたのは七緒さん。
「トコロであっちではどうだったの?リカならモテタでしょう?」
眩しいみたいに目を細めて、余裕たっぷりに微笑んでくれちゃったよ、このヒト。
モデルの仕事で小ジャレタ格好をした俺を誉める時みたいに。
心配とか憂いとかまるでナシですか!?
なんか思いっきり範疇外宣言を受けたみたいで内心ザックリ斬りつけられつつ、俺は別の意味で乾いた笑みを浮かべた。
「…それについてはあまり言いたくないんだけど…モテタ、よ。ものすごーく!」